数学を学ぶとはどういうことか

『数学を学ぶことによって、ビジネスや実生活の中で、具体的にどんなプラスの効果があるのか?』

『大人になった我々が再び数学を経験することは、自分たちにどんなベネフィットをもたらしてくれるのか?』

 

ほとんどの人にとって、数学とは、「10代の半ばで終わったもの」か「大学受験以降はすっかり忘れ去られたもの」であると思います。

そんな中、今ふたたび数学を学ぶことの意義は一体どこにあるのか?

 

当ブログの最大のテーマが、ここにあります。

 

 

私は普段、医学部合格を目指す受験生に数学マンツーマン指導をする一方、大人向けに数学を楽しむコミュニティを主宰しています。

きっかけは、初対面の人に私が数学を仕事にしていることを言うと、かなりの確率でネガティブな言葉が返ってきていたからです。(まあ、実際それは納得できる状況ではあるのですが…)

 

私は、数学を生業にしているひとりの身として、なるべく多くの大人の方に次のように感じてもらえたらと思ってこの活動をしています。

「昔は挫折してしまった、そして嫌いだった数学を、少しでも好きになってもらいたい。そして、かつての数学に対するネガティブな感情を少しでも和らげることで、僅かではあっても確実な自信を生み、より多くのことにチャレンジできるきっかけにしてもらえたら…」

それが、私が「おとな数学」を始め、また今まで続けてきた根底にある想いです。

 

またそれに関連し、2019年2月、すばる舎より『もう一度解いてみる 入試数学』という、大人向けの数学本も出版させていただきました。

 

 

ただ、活動を続けるにしたがい、私の中で新たなモヤモヤが生まれてきました。

「数学を楽しむことや好きになることは確かに大事だけど、それだけだと曖昧さが残ってしまう。数学を学習することが、実際目に見える形でどんなプラスの効果を我々にもたらしてくれるのか?」

それがつまり、冒頭の言葉になるわけです。

 

 

数学の話をすると、よく揶揄される言葉があります。

「sin、cos、tanって、実際の生活で全然使わないよね~(笑)」

それに対し、私の答えはこうです。

「本当に大事なのはsin、cos、tanなのではなく、sin、cos、tanを使って考える過程が大事なんだ」と。

 

(一応お断りしておきますが、工学系・理学系の仕事をされている方は、実際業務上で使っています。当然ですが、念のために…)

 

つまり、sin、cos、tanは単なる思考するための道具であって、数学を学ぶことの本質は、その道具を使いこなせるようになるまでの、その過程にあるのです。

言い換えると、sin、cos、tanだろうが別のものであろうが、何であっても、あらゆる思考ツールを自由に使いこなせる状態を目指す訓練、それが10代で数学を学ぶことの本当の意味だと私は思うのです。

そしてもちろん、その訓練は10代だから大事であるだけでなく、我々大人にとっても全く同等か、もしかしたらそれ以上に重要になってくると思うのです。

 

 

数学によって鍛えられる力には、論理力・思考力・想像力・推測力・論証力があります。

これらって、よく考えてみると、どれもビジネスをする上でも重要なものばかりではありませんか?

できるビジネスパーソンは、皆これらの能力を持っていそうではありませんか?

 

もちろん、ビジネスではこれ以外にも大事な能力はあります。

たとえば行動力は大事でしょう。どれだけ論理的に優れた計画であっても、実際に行動に移さないことには全く意味がありません。

また、意志力や最後までやり抜く力も重要でしょう。どんなに論理的に優れた人物であったとしても、小さな挫折ですぐ諦めてしまうようでは、ビジネスでの成功は見込めません。

 

これらの力は、もしかしたら数学でカバーできる範疇にないのかもしれません。

ただだからといって、そのことが、数学によって養われる力がビジネスで何に立たないことの説明には全くなりません。

数学が苦手だった人の「数学なんて勉強しても無駄だよ」という言葉には、おそらく説得力はあまり感じられないでしょう。

 

「数学の勉強には必ず意味がある」

これが私の変わらぬスタンスです。

 

 

再び、次の冒頭の言葉に戻ります。

『数学を学ぶことによって、ビジネスや実生活の中で、具体的にどんなプラスの効果があるのか?』

『大人になった我々が再び数学を経験することは、自分たちにどんなベネフィットをもたらしてくれるのか?』

 

その答えは、きっと私の中にあるはずです。

ただ、まだ十分に表出化・言語化できていないのが実情です。

このブログを通じて、より「具体的な」ベネフィットをあぶり出していきたいと思います。

どうぞお付き合いいただけたら幸いです。