ことしの本大賞『宇宙と宇宙をつなぐ数学』読了しました。

先日ニュースになった、八重洲ブックセンター「ことしの本大賞」に選ばれた加藤文元先生の【宇宙と宇宙をつなぐ数学】を読了しました。

なんでも、同賞は小説やノンフィクションが選ばれることが多いようで、その中で数学の解説書が受賞するのは極めて異例とのこと。

 

この本は、大まかにいえば「宇宙際タイヒミュラーICU)理論」という理論の解説書で、その理論自体は超難解なのですが、本書では、その考え方の根底にある数学的な思想に多くのページが割かれています。

そのため、理論自体は理解できなくても、この理論のどこが優れていて、何を目指しているのか、といった背景がありありと伝わってきます。

 

また、本の中で度々現れる著者の数学感は、数学に縁が遠い人にも届く部分が多くあるとのでは、と思います。

 

【数学が得意な人は、もちろんロジック(論理)に強いのですが、ひらめきや直観による総合的把握の能力にも優れている】
という箇所は、私自身もよく伝えていることだったので、嬉しい気持ちになったり、

【数学では、未知のことやまだ実現されていないことを、すでに知っている、あるいは実際に起こっていることを参考に、それを真似ることで理解したり、実現する】
という下りは、数学の行為でありながら、どんな世界でも共通することで、数学力と一般的な能力の共通部分であることを認識したり。

 

「数学をする」ということがどういうことなのか、その像がぼんやりと感じられる本だと思います。(最後の章はかなり難解ですが…)

 

数学が好きな人はもちろん、数学を好きになりたい(そして読書が好きな)人にとって、最高の本だと思います。

 

f:id:suzzukes:20191201121040j:plain